淡い色に染まるとき。
『それ以上言ったら本当に怒るから』


聞きたくない、大嫌いな言葉。

彼女はいきなりメモ帳を叩き落として、私のことを叩いてきた。


「あの男の人も本当のお父さんじゃないくせに!偽物とよく一緒にいられるね、可哀想!」


偽物なんかじゃない、もう1人のお父さん。

だからね、お父さんの悪口言わないで。


「キモイ!しかも、抱き合うとか手を繋ぐとか、キモイ!変態なんじゃないの!」


もう限界だった。


私のことを悪く言ってもいい。嫌いなら嫌いでいいよ。

でもね、雪ちゃんや彼のことを馬鹿にするのは許せないの。


パンッ、と静かな教室に響く。


「な、何するの!」


思い切り頬を叩いてしまった。

怒る彼女を見ていると、自分も同じことをしていると悲しい気持ちになった。

涙が溢れてきて、ハンカチで拭くと彼女がいきなり扉を開けて叫んだ。



「先生ー!古市さんが叩いてきたー!」



やっぱり、通じなかった。

彼女には私の言葉なんて通じない。彼や雪ちゃん、唯香ちゃん、花ちゃん、桃子ちゃん…色んな人達はちゃんと分かってくれた。


違う学年の先生がやってきて、私と彼女を引っ張って職員室へ。


ざまあみろとでもいうような顔で私を見てくる彼女。


私がやったことは悪いってよく分かってるから、怒られても仕方ない。だけど、あなたは反省もしないなんて。


持っていたメモ帳をポケットに入れて大人しくついていった。



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