淡い色に染まるとき。
中に入ると、梓の担任が駆け寄ってきた。

軽く挨拶をして、奥へと案内される。教師達がちらりと俺を見て頭を下げる。


奥にある部屋へと案内されて入ってみると、無表情の梓と喚く女の子。


「梓…?」


ただ女の子を見つめたまま、動かない梓。声をかけてみると、俺を見て少しだけ俯いた。

女の子は馬鹿にしたような顔で俺を見て、また梓に叫ぶ。


「全然、似てないね。可哀想ー!」


梓はメモ帳を持っているが、何も書かずに女の子を見つめる。

女の子は教師に怒られても、梓に叩かれて酷いことを言われたんだ、私だって言わなきゃ!と言っていた。


俺は梓に近づいて頭を撫でる。


「どうした、梓。何があった?」


メモ帳を落として、必死に口を動かしていた。


何か言いたくて涙目になりながら気持ちを伝えようとする。


口の動きを見ていると、少しずつ分かってきた。


『許せなかったの。どうしても』


「うん。何が許せなかった?」


『恭お兄ちゃんと雪ちゃんのこと悪く言われたの。それが嫌だった』


「手を出したのは本当か?」


『うん。それは悪いことだって分かってる』


「そうだな。謝ったか?」


『謝ったけど、こんな感じで』


いつまでも罵声を浴びせる女の子。何で梓にそこまで言うのだろうか。

梓がそこまで言われるほど、何かしたのか?


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