淡い色に染まるとき。
どうするべきか考えていると、梓の担任が前に出てきた。


「文司さん、いい加減にしなさい。古市さんだって謝っているんだよ?あなたもメモ帳をゴミ箱に投げたり、悪口を言っていたんでしょう?あなたも謝りなさい」


メモ帳をゴミ箱に?

梓が落としたメモ帳を拾って見ると、少し汚れていた。

そういや、このメモ帳…彰があげたやつだ。梓を見てみると、泣くのを我慢して唇を噛んでいた。


手を伸ばして頭を撫でる。


「梓は、本当に声が出ないんだ」


「嘘。皆に優しくしてほしいから」


「皆だって、声が出ても優しくされるでしょ?」


「…甘えてるだけじゃない」


「そうかもしれない。叩いたことは本当にごめんね。後でしっかり怒っとくから」


俺と梓は血が繋がっていない、偽物だと言われても仕方ない。

それでも、俺達は親子だって思ってる。


血なんてどうだっていい。梓もそう思っているはずだ。


「梓、もう一度謝りなさい」


大きく頷いて、女の子に頭を下げた。口を動かして、涙を流した。



『ごめんなさい』



「…もう、いい」



女の子は唇を噛んで、部屋から出て行った。

これで、終わるといいんだが…。


梓を見てみると、メモ帳をしっかりと持って目を擦っていた。



「梓。今日は家に帰ろう」



今日はゆっくりしたほうがいいだろう。


あの女の子も、きっと今は会いたくないと思う。


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