淡い色に染まるとき。
朝ごはんを食べながら彼の顔をじっと見てしまう。

あんな夢を見るのは、きっと心が不安になっているから。


彼とずっといるってもう何度も確かめたのに。声を出せるよう頑張るって。繰り返してきたことなのに。



「ハンドクリーム、新しいの買っておいたからな」



柑橘系の匂いがするハンドクリームを渡されて、彼を見上げるとにっこり笑って頭を撫でられた。


カサカサになった手に塗ってみる。ほんのりと香る、柑橘系の匂い。


「これ、お母さんも使ってたんだぞ」


『そうなの?』


「俺とお父さんが小学生の時にお母さんにプレゼントしてさ。大人になってもずっと使ってたんだ」



そっかぁ。お母さんと同じなんだ。大事に使おう。

手をパタパタと振って乾かしていると、彼は微笑んでよかったなと言った。


お皿を片づけようと立ち上がると、ハガキが床に落ちていた。



同窓会のお知らせ…?



「あ、それ俺のだ」


『面白そうだね』


「梓も大人になればこういうのあるよ」


『これ大事なものでしょう?ちゃんと持っておかないと』


「いや、行かないんだ」



どうして?久しぶりに友達に会えるんでしょう?



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