淡い色に染まるとき。
彼は2つの指輪をじっくりと見た後、私の右手の薬指に重ねて嵌めた。

彼を見上げると、優しく頭を撫でられた。


「あー、いいなぁ。私にもー」


女性達が羨ましそうに走ってやって来て、彼の腕を掴む。

彼は呆れながらその手をゆっくりと外す。


私にはまだ大きいよ。あとちょっと成長したら、似合うのかな。


優しく指輪を撫でて、ハンカチに包んでリュックに入れた。


「もう入れちゃうのか?」


『失くしちゃうかもしれないから』


「まぁ…まだ梓には大きいもんなぁ」



そして、手紙を取り出して彼に渡した。

不思議そうな顔をしながらお母さんの手紙を見た。



「『恭は、私の初恋の人でした』…え?『いつも真剣に話を聞いてくれて、味方してくれて嬉しかった。でも、私はこの中学卒業と共にこの恋からも卒業します』」



彼に恋をしていたお母さん。



「『博也とのこと、もっとちゃんと考えてみる。いつかこれを取り出す時、3人でこれを見たいな』…そういや、これ埋める時…博也が異常に顔真っ赤にして愛華とイチャついてたな」



…何でそんな感想なの…。

違うでしょ、初恋の人って言われてるのに、あっさりとどうでもいいことを言うの。



『それだけ?』


「知らなかったなぁ。俺、小学生の時は昆虫採取とゲーム、中学の時は遊び、高校の時はカラオケとバイト、大学の時は勉強に集中してたから…」



本当に変な人。

恋愛より遊びが大事だったんだね。それにお母さんも気付いて恋が冷めちゃったのかなぁ。


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