淡い色に染まるとき。
「こっ、これ…梓が作ったのか?」


そう、その顔が見たかったの。

鍋の蓋を開けて覗き込むとまた驚いていた。


「すごいなぁ、梓。いつの間にこんなに成長したんだ?」


強く抱きしめられて、嬉しくて私も強く抱きついた。

すると、肩を震わせて「そっか、そっか」と呟いていた。

どうしたんだろう、どこか痛いのかな。


震える彼をもっともっと強く抱きしめると、泣いているようでどんどん彼の手の力が強くなってきた。


泣くほど嬉しかったのだろうか、本当はもっと彼の好きなものを作りたかったんだけど。


次はもっと覚えるよ。肉じゃがとかオムライスとか。


しばらく抱き合っていると、彼が目を擦りながら離れた。


「ありがとうな、梓。なぁ、一緒に食べないか?」


頷いて、彼を椅子に座らせると私は急いで冷蔵庫に向かい、作ったものを温めた。

ビールと枝豆を取り出して、テーブルに置くと彼は大喜び。

すべて出来上がり、私はオレンジジュースを持って隣に座った。


「美味そうだな。じゃあ、いただきます」


味、大丈夫かな。甘すぎたり、しょっぱ過ぎたりしてないよね?

じーっと見ているとニコニコしながら「美味いよ」と何度も言ってくれた。


今度はデザートを作れるようにしよう。


「遅くなってごめんな。寂しかったろ?」


『大丈夫だよ。眠っちゃったし』


「嫌な夢でも見たのか?」


『とってもいい夢だったよ』


2人が会いに来てくれたんだもの。

きっと私が寂しがっているから、会いに来てくれたんだよ。


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