淡い色に染まるとき。
『梓。大丈夫?』


お母さんが心配そうに私の頭を撫でる。お父さんは何だか泣きそう。


『大丈夫だよ。ちょっと風邪引いただけだから』


『ちゃんとごはん食べて、温かくしなさい。換気もして…』


『俺達が傍にいてやれたらなぁ…』


お父さんがポツリと呟いた。


『こうしていられるじゃない』


『そうだけどさぁ…梓の看病したいし…』



もうどうしたってそんなことは出来ないと呟いて、唇を噛んで俯くお父さん。

そんなこと言わないで。

私はお父さんの手を掴んだ。


夢の中だけど、こうして触れる。感覚はないけど、すごく嬉しいよ。

もう会えないと思っていたのに、夢ならこうして会えるんだもの。


現実では触れることも出来ない。夢なら抱き合うことも手を繋ぐことも出来る。


『あなた。我が儘言わないの。梓の言う通りでしょう?こうして会えただけでも幸せだわ』


『そうだな、ごめんな、梓』


『また会えるよね?』


『会えるよ。絶対また出てくるから。ほら、そろそろ起きて恭に言ってくれ「梓を放って喧嘩すんな」ってさ』


絶対伝えるよ。また夢で会う時は元気になるからね。


手を離して目の前が真っ暗になった。



目を開けてみると、現実に戻ったようで。


「梓、大丈夫か?ごめんな、本当に」


泣きそうな彼がタオルで汗を拭いてくれる。

大丈夫だよ。ちょっと眠ってただけだからね。


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