淡い色に染まるとき。
彼の大きな手を掴んで見てみる。お父さんも生きてこうしたかったんだろう。

涙が溢れてきて、お父さんやお母さんの言葉を思い出す。


「どうした?どっか痛いか?」


お父さん、悲しそうな顔してた。私と遊びたかった、教えてやりたかったといつも言ってた。お母さんは、家事を教えたかったと言ってた。


本当はね、さっきお父さんに言った言葉…強がって言っただけなの。本当はずっと一緒にいて欲しかったの。何で死んじゃったの、何で…。


彼の手を掴んだまま泣いていると、強く抱きしめてくれた。


「大丈夫。大丈夫だからなぁ」


優しく優しく、頭を撫でてくれる。



「ずっと一緒だから」



その言葉、大好きだよ。


涙を指で拭ってくれて、微笑んでくれて、抱きしめてくれて。


ありがとう、ありがとう。


お父さんがしたかったこと、全部彼がやってくれている。

お母さんがしていたこと、全部彼がやってくれている。


夢の中では2人がやってくれる、幸せなことだって分かってる。




「お…とうさん」




私はとても我が儘だ。

お父さん、お母さんと彼がいてくれたらと願う。

いつまでも一緒にいられたらと、我が儘だね。



「梓、今…」



驚いている彼。

どうしたの…?



「今、声…出て」



ポカンと口を開けて彼を見ていると、私の肩を掴んでもう一度と迫ってきた。


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