淡い色に染まるとき。
私、今話せてた?

喉を押さえて彼を見つめると、涙目になりながらもう一度と呟く。


深呼吸をして口を開いてみる。



「お、とうさん…お父さん…?あれ…?」



話せてる。嘘、本当なの?

彼は固まって私の顔をじっと見てくる。



「私、話せてるの?」



声が掠れているけれど、話せている。

もしかして、お父さん達が治してくれたのかな…私の声を。


彼はまた強く抱きしめてきて、むせび泣いた。

震えている彼の背中を何度も擦った。私は何度も彼にありがとうと言った。


今まで言いたかった言葉を繰り返した。


そんな私達の泣き声が聞こえたのか、エプロンをつけた圭さんが大慌てで部屋に入ってきた。



「な、何で泣いてんだよ…?」



彼と私を交互に見ながら聞いてきた。



「あのね、話せるようになっ…」



言いかけると、彼がズルッと崩れ落ちた。

驚いて何度も呼びかけるけど、返事がない。


どうしたの。揺さぶっても声をかけても起きない。



「…寝てるな」



圭さんが呆れながら彼の頬を引っ張る。強く抓られても起きない。

私の看病で疲れちゃったのかな?


< 135 / 144 >

この作品をシェア

pagetop