淡い色に染まるとき。
「とりあえず、寝かせとこう。梓が倒れるように寝た時からずっと心配してたから」


そうだったの。ごめんね、お薬が効いたせいかもしれない。


「…で、梓。声、出るんだよな?」


「うん。まだ喉痛くて掠れてるけど」


「…本当に、よかった」


「…泣いてるの?」


目を擦りながら泣いてない!と言ってキッチンへ逃げていく。

私は彼をお布団で寝かせることにした。彼を引っ張って寝かせると、彼が何か呟いていた。

聞き取れなかったけど、きっといい夢なんだろうな。


微笑んでいる彼の手を握ってちゃんと声を出して言ってみる。




「お父さん、ありがとう」




お母さん、2人のお父さん。

この声が治ったのは、皆のおかげだよ。

ありがとう。


夢の中にいる彼に届いたかな、強く私の手を握ってきた。



「おやすみ」



起きたら一緒にロールケーキを食べよう。

そしたら、たくさんお話をしよう。


あの日から止まっていた声を、もう一度あなたに聞かせることが出来る。



「いっぱい話そうね」



彼の小指と自分の小指を絡めて勝手に約束をした。


でも、いいよね?


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