淡い色に染まるとき。
食べ終わると急いで食器を洗って片づけた。

テーブルも拭いて、彼のところへ行く。


「2人に電話したいの。お願い」


「分かってるよ」


彼が微笑んで私に携帯を渡した。

メモ帳を見ながらボタンを押していく。


何て言おうかな。驚いてくれるかな。


ドキドキする胸を押さえながら電話をかける。


『もしもし、古市ですが』


お爺ちゃんの声。


「あ、あの…」


『ん?』


「お爺ちゃん、梓です」


緊張して声が震えてしまう。

今までメモ帳でしか会話してこなかったからかな。


「あのね、声が出るようになって…」


『梓!?ちょ、ちょっと待ってくれ!おい、母さん!』


驚いてくれている。嬉しくて笑うと彼が優しく頭を撫でてくれた。

彼と手を繋ぎながら、お爺ちゃんの返事を待っていると、お婆ちゃんが出た。



『もしもし?』


「お婆ちゃん」


『…梓ちゃん?本当に梓ちゃん?』



繰り返し聞かれて、そうだよと言うとお婆ちゃんは驚いてそうなの、そうなの…と泣いてしまった。


彼に電話を代わると、彼は笑いながら泣くなよと言った。



「昨日、声が出せるようになってさ。え?親父も泣いてる?は?近所の人に泣きながら話してる?おい…止めさせろよ…」



呆れながらお婆ちゃんに言う彼も、涙目になってる。


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