淡い色に染まるとき。
ごはんを食べ終わり、食器をすべて洗い終えると彼がお風呂に向かう。

私はその後ろについていく。もうひとつやりたいことがあるの。


「どうした?」


『背中流すの!』


「え!」


パジャマとタオルを落として顔を真っ赤にさせる。

私はそれを拾い上げて彼をお風呂に連れて行く。



「…いや、その…」


『ダメ?』


友達の唯香ちゃんも、桃子ちゃんもお父さんの背中流したって言ってたよ。

私にとってのお父さんは彼だから、背中を流したいの。

お願いをし続けて5分、やっと頷いてくれた。


服脱ぐからちょっと出ててと言われ、待っているとすぐに入っていいよと言われた。

入ってみると、腰にタオルを巻いて椅子に座って待つ彼。


そういえば、彼と一緒にお風呂に入ったのはいつ以来だろう。


大きな背中、何となく懐かしい。

両親が生きてた頃、私は彼によく抱きついて甘えていたな。

何度も抱っこやおんぶをせがんだ。


ボディタオルでゆっくり優しく洗うと、鏡に映る彼は目を閉じていた。


何か考えているのだろう、何も言わずにただ背中を洗い続けた。


「ありがとうな」


今日の彼は泣き虫のようだ。

ごはん作って、背中を流しただけで泣いてしまう。


私は背伸びをして、そんな彼の頭を撫でた。


「ありがとう」



私達はまたひとつ近づけた気がした。


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