淡い色に染まるとき。
皆に電話をして、彼に携帯を返す。


「良かったなぁ、梓」


「うん。お父さんや皆のおかげだよ」


「…お父さんっていうのはー…」


頬を赤くして恐る恐る聞いてきた。


彼に抱きついて、もう一度呼んでみる。


「お父さん。私のもうひとりのお父さんだよ」


生んでくれたお母さん、お父さん。恭お父さん。唯香ちゃん、桃花ちゃん、花ちゃん、雪ちゃん、圭さん、お爺ちゃん、お婆ちゃん、学校の先生…。


色んな人と出会って、色んなことを学んで、彼と一緒に前に進んできた。


泣いたり、怒ったり、喜んだり、彼と皆と。


この声が出るようになったのも、皆のおかげなんだから。



「梓ー…もう一回言ってー」


「お父さん」


「もう一回!」


「お父さん!」



そんなことを繰り返していると、圭さんが笑いながら私の頭を撫でた。



「俺の名前、呼んで」


「圭さん」


「もうちょい…」


「圭お兄ちゃん」



圭さんも笑顔で、そうそうと頷いていきなり携帯で写真を撮られた。



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