淡い色に染まるとき。
彼の手をぎゅっと握ると、照れ笑いをして握り返してくれた。


もしも、彼がいなかったら。

彼や圭お兄ちゃん、お爺ちゃんお婆ちゃん、担任の先生、友達皆いなかったら。

私はどうなっていたんだろう。

きっとこんな楽しくて幸せな生活はなかった。


「ありがとう」


お父さん、お母さんが生きていればまた違った幸せもあったかもしれない。

考えれば考えるほど、色んな道が見えてくる。


「どういたしまして」


ぼやけていた視界は。


今はとても綺麗に。鮮明に。


「大好きだよ」


彼に飛びついて、たっぷり甘える。

これから先、何十年と私は彼といるのだろう。


彼がお爺ちゃんになっても、私はずっと隣で手を握るんだ。


だから、約束だよ。




「おとうさん」




fin


< 143 / 144 >

この作品をシェア

pagetop