淡い色に染まるとき。
どこにも女性のことが分かるものはなかった。

時間もかなり経ってしまった、そろそろ帰らないと怒られてしまう。

メモは残したけど、朝早くから出かける用事なんてないから問い詰められるだろう。


リュックを持って外へ出る。

振り返って家をよく見ておく。次、来る時はもうないと思うから。


「梓!」


いきなり後ろから抱きしめられて、私は転びそうになった。

驚きながら見てみると、彼が泣きそうな顔で抱きしめてきた。


何でいるの?

どうしてここにいることが分かったの?



「梓ぁ…」


『ごめんなさい』


「何で1人で出かけたんだ」


『疲れてるでしょう?だから』と書いていると、メモ帳とペンを取り上げられた。


「いなくなって…本当に怖かった。お前までいなくなるなんて…耐えられない」


…何て馬鹿なことをしてしまったんだろう。

彼も1人は怖いってことを知っていたのに、何で1人にしてしまったんだろう。


口を動かしてみるけど、やはり声は出なくて。


ごめんなさい、ごめんなさい。


両親がいなくなって辛いのは私だけじゃない。


視界がぼやけて、喉が痛くなる。


確か、お葬式の日もこんな感じだった。


泣くのを我慢している彼とすがりつくように抱き合っていた。



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