淡い色に染まるとき。
「よかったじゃない…ん?あれ、梓の彼、もう帰ってきてるの?」


花ちゃんが私の部屋の窓を見て言った。

今日は遅くなるって言ってたから、いるわけがない。

よく窓を見てみると、誰かがいるようだ。


すると、その誰かはカーテンを開けてベランダに出てきた。


え…?


由梨、さんだった。


どうして家にいるの、どうしてこっちに笑顔で手を振るの。

どうして…?


「梓、知り合い?」


「綺麗な人だねぇ」


「…梓?どうしたの?」


怖くなって動けずにいると、由梨さんが部屋から出てきて私達に向かってきた。

笑顔なのに、目は笑ってない。



「梓ちゃん、久しぶりね。憶えてるかしら?」


棒読みのような、感情のない言葉。

答えない私の代わりに、皆が適当に返事をしてくれた。



「あなたは誰ですか?」


唯香ちゃんが前に出て、由梨さんに問いかける。

由梨さんは、彼の恋人だと言った。違う、違うよ。

あなたは彼と両親の元友人、そうでしょう?


「恭、遅くなるって言ってたでしょ?夕飯、私が作ってあげようかなって」


『大丈夫です』


「女の子1人、置いていくわけにはいかないわ」


『大丈夫です。もうそんなに小さい子じゃないんで』


何故か家にいようとする由梨さん。

彼がいないのに、この人と2人きりなんて嫌。


< 26 / 144 >

この作品をシェア

pagetop