淡い色に染まるとき。
ビーチで遊び終わり、その後は適当にフラフラとしていた。

お土産屋さんに寄って、お皿やお菓子を買ったりもした。アイスを食べながら散歩もした、とにかく色々な所へ行って写真を撮った。


ただ宿へ帰る途中、綺麗な女の人に声をかけられた彼は素っ気なく返事をして私の手を引っ張った。

どうしたのと聞けば、梓との旅行を邪魔されたくないからさと笑って言った。


旅行中、こういうことはよくあることだ。

彼はとてもカッコイイから色んな女の人に話しかけられる。囲まれたりもした、腕を掴まれたりもしていた。それでも彼はさっさと抜け出して私の元へとやってくる。


まるで本当の親子のように。いや、もう親子だと私は思っている。

お父さんみたいに、優しくて面白いカッコイイ彼。


「モテる男は辛いなぁ」


なんて言っても私、知ってるんだからね。

興味なさそうに彼女達を見ては逃げてくるんだから。

どんなに綺麗で可愛くても、どうでもいいような目をしていること。


私を見る時は、とても優しい目をしているのに、何故こんなにも違うんだろう。


宿に着くまで彼の手をしっかり掴んで考えていた。



「今日のごはんは…おっ、もずくの天ぷらあるぞ」


キラッと目が輝く。意地悪。食べさせようとしているのがよく分かる。

さっと自分の食べたいものだけお皿にのせて、席に着く。

彼は自分のお皿に3つも、もずくの天ぷらをのせていた。仕返しする気だ。


「美味そうだなぁ」


返事をしないで食べていると、もずくをお皿にのせられた。

箸を落としそうになってしまった。こんなものを何故、私のお皿に…。


私は急いでゴーヤーチャンプルを持ってきた。勿論、彼の目の前に置いた。


嫌そうな顔をした。朝のゴーヤージュースなら美味しく飲めたけど、これは苦味がちゃんと残っているから彼にとっては最悪なはず。



「最近、梓が意地悪だな」



『お互い様』



彼はもずくを大人しく食べ始めた。私はのせられたお皿を彼に渡して、ゴーヤーチャンプルを食べた。



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