淡い色に染まるとき。
彼を見ていてやっと気付いたのだが、ハートは落ちてしまっていた。

ということは、私のハートも落ちているかもしれない。何となく頬を触ってみると彼が笑いながら落ちてるよと教えてくれた。

もしまた私の顔につけようものなら、彼の顔全体につけてあげるんだから。


スタンプの話から今日の出来事について話していると、隣の席の男性が話しかけてきた。



「恭じゃないか?」


「彰?久しぶりだな、いつ日本に帰ってたんだ?」


「一か月くらい前にな」


彰と呼ばれた眼鏡をかけた男性は、嬉しそうに彼の肩を叩く。

そして私の顔をじっくりと見てきた。顔が近い…。


「この子は…」


「俺の子」


「…なるほどな。いや、5年前、風の噂を聞いてな」


私の頭を撫でて、懐かしむようにまたじっくりと見てきた。

彼は微笑んで私達を見ていた。何だか変な感じがする。



私達は食堂を出て、外に向かった。

少し生温い風、食堂から美味しそうな匂いを感じながら近くのベンチに座った。


彼と彰さんは思い出話に花を咲かせた。

私は拾い集めた貝殻で遊んでいた。これにビーズつけたら可愛いかな。ネックレスとかにしたらもっと可愛いよね。

夢中になって遊んでいると、時々、彼らは私の頭を撫でる。


彼らの話の邪魔をしてはいけないと思い、また貝殻に集中した。

久々に会えた友達なんだから、今は…。



「葬式にも行けなくてすまなかった」


「いいんだ、あいつらも分かってるはずだから。それに毎年、お前のご両親から花が届いてるからさ」


「そうか。しかし、お前が父親になるとはな」


「意外か?」


「まぁな。女見ても溜息しか吐かなかったから。一時期、男が好きなのかと…」


「おいおい…」


「今じゃ、子供にデレデレ」



彰さんは笑いながら過去の話をしていく。その度に彼は慌てたり、呆れたりしていた。



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