淡い色に染まるとき。
翌朝、私達は宿を出る準備をした。今日で帰ると思うと少し寂しい。

彼も同じ気持ちなのだろうか、窓を開けて景色を眺めたり、荷物をゆっくり片づけていた。

帰りたくないと言っていたのだから当たり前か。


「今日はちょっと遊んだら帰るしかないな」


そうだね、時間は少ないから本当に行きたい所に行かなきゃね。

急いで行きたい所へと向かう。

タクシーに乗ってオススメの場所を聞いてみた。


「それなら…宮城海岸がオススメですよ。地元の人間もよく見に行くんで」


夕日が海に沈む姿はとても美しい、人気も高いんですと運転手さんが教えてくれた。


「デートコースとしても人気が高いんですよ。お嬢ちゃんもパパと行ってごらん」


パパと呼ばれた彼は嬉しそうだった。運転手さんに可愛いでしょ?なんて言っていた。

運転手さんオススメの宮城海岸へと向かっている途中も、彼はまだ嬉しいようで興奮していた。


運転手さんも私もそれがおかしくてつい笑ってしまった。


こんな娘さん思いのお父さんは初めてだ、と言っていた。


「さぁ、着きましたよ。いい思い出を作ってください」


運転手さんにお礼を言って、私達は歩き出した。

堤防から海を見てみるとサーフィンをやってる人が多かった。そして大きな歓声も聞こえた。


歩きながら見ていると、ダイビングをやっている人達もいた。

いいなぁとも思うけど、泳ぎがあまり得意ではないから見ていることしか出来ない。


今度、彼とプールに行く時、教えてもらおう。


「夕日までまだまだ時間あるから、少し海で遊んだりするか」


そうだね。花ちゃん達にもお土産買わないと。彼は同僚の先生達に買わないとね。


お土産屋さんでお菓子やキーホルダーを買った。海では砂のお城を作ったりした。カメラであちこち撮ってみたりもした。


楽しい時間もあっという間。夕焼けまであと少し。


一番よく見えそうなところで立って待っていると、夕日が沈んでいく。

海へゆっくりと落ちていく。


綺麗で言葉も出ない。彼も同じようで夕日をじっと見ていた。


< 52 / 144 >

この作品をシェア

pagetop