淡い色に染まるとき。
そして、彼の両親のお家へ向かう日がやってきた。

彼の実家は昔はこの家の近くにあったらしいけど、引っ越したそうで今は京都に住んでいるらしい。


荷物を持って外へ出ると、彼のお父さんが笑顔で待っていてくれた。


「親父?迎えに来てくれたのか」


「そりゃあ、孫と会えるんだからな。久しぶり、梓。これで2回目だなぁ」


私の頭を撫でて優しく話しかけてくれた。本当に彼にとても似ている。

性格も容姿もそっくりな親子だ。


「さっ、お爺ちゃんと家に行こうな。恭、お前は仕事ちゃんとやれよ」


「分かってる。梓、楽しんでこいよ」


彼に手を振って、タクシーに乗り込んだ。どんどん遠ざかっていく彼に手を振り続けた。

必ず電話するからね、待っててね。彼の姿が見えなくなるとお爺ちゃんが色んな話をしてくれた。


京都に着いて荷物を置いたら少し出かけよう、写真を撮ろうと言った。


「梓も大きくなったなぁ。写真は送ってもらってたんだがな」


『恭お兄ちゃんも大きくなったよ』


「そうだなぁ。まぁ、俺に比べればまだまだ小さいもんだよ」


彼も背は高いけど、お爺ちゃんは彼よりも少し高い。

彼をほんの少し老けさせたようなお爺ちゃん。まだまだ若く見える。


素直にそのことを言ってみると、照れながらも喜んでいた。


新幹線に乗っている時も、退屈させないようにと色んな話をしてくれた。

彼の小さい頃の話、両親と彼がいつも一緒だったこと、彼が私を大切だと思ってくれていることなど色々と聞けた。


「電話しても梓、梓って言ってるんだぞ。ネクタイ結んでくれたとか、背中洗ってもらったとか。お爺ちゃんもやって欲しいなぁ」


あ、また似てる。

ちょっとふざけて言うところがよく似ている。


彼の分身みたいで笑ってしまった。さっき彼と離れて寂しかったけれど、もう1人の彼がいるみたいで寂しさも吹き飛んだ。



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