淡い色に染まるとき。
京都のお家に着くと、彼のお母さんが勢いよく家から出てきて抱きしめてきた。

驚いてどうしたらいいか困っていると、笑顔でいらっしゃいと言ってくれた。


「久しぶりねぇ。梓ちゃん。私、ずーっと待ってたのよ!」


「こらこら。梓の骨が折れるぞ」


「あら、ごめんなさい!さっ、お菓子用意して待っての!入って入って」


手を引っ張られながら家へ入ると、大きな犬が玄関で寝そべっていた。

怖くてお婆ちゃんの後ろに隠れると、2人は大丈夫だから触ってごらんと言われた。


恐る恐る背中を撫でてみると、起き上がって私の手を舐めた。


「ボルゾイっていう大型犬だ。大丈夫、噛んだりしないから」


私が怖がっているのが分かったのか、擦り寄ってきたり、手を舐めたりしてきた。

仲良くしようって言ってるみたい。私も何度も頭や背中を撫でると嬉しそうにしっぽを数回振った。


「ルーチェ。お座り!」


ピクリと耳が動いて素直に座るボルゾイ。

ちゃんと躾られているんだ、色んな芸をしてくれて、褒めると嬉しそうにグルグルと私の周りを回った。


「さてさて、皆でお茶しましょうよ」


お婆ちゃんがにっこり笑ってリビングに向かう。

広いお家だなぁ。ここに2人と1匹じゃ寂しい感じもする。


お婆ちゃんに案内されて入ると、テーブルの上に色んなお菓子が置いてあった。


豆餅、甘栗、生八つ橋、金平糖、お団子、ケーキ、お煎餅。


「いっぱい食って、いっぱい散歩しような」


お爺ちゃんが3つ金平糖を口の中に放り込んだ。

私も金平糖を1つ食べてみる。口の中で、じんわりと甘さが広がる。


味わって食べていると、もっと食べて大きくなれよと言ったお爺ちゃんがガリガリと金平糖を噛み砕いていた。

お婆ちゃんはそんなお爺ちゃんにちょっと怒っていた。そんな食べ方しないの、と怒られてシュンとして私と同じように1つずつ味わって食べていた。


面白くて笑っているとルーチェが私の膝に顔を乗せてきた。

触って、と言っているみたい。撫でてあげると満足そうにして目を閉じた。



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