淡い色に染まるとき。
お家に帰ると、私は電話を借りて彼に電話を掛けた。

今日の報告をしないと。それに彼も1人じゃ寂しいだろう。


『もしもし?梓だな。電話ないから寂しくて寂しくて…』


ふざけたように言う彼の声を聞いて安心した。帰ったら思い切り抱きつこう。


『久々の1人だから、食事2人分作っちゃってさー』


如何に寂しくて仕方ないかを遠回りに話し出す。いつもみたいに私がいると思って話しかけたりもしたそうだ。

私だって彼がいると思って何度も振り返ったよ。でも、彼にそっくりなお爺ちゃんがいただけだったの。


『梓ぁ』


「気色悪い声、出してるとはなぁ」


お爺ちゃんが代わってくれと何故か小声で言ってきたので代わるといきなりそんなことを言った。

彼の驚いた声が聞こえた。ごめんね、いきなり代わっちゃって。


『おっ、親父!梓は?』


「今変わってもらったんだ。お前、梓に甘え声なんて…」


『ち、違う!それより、梓と代わってくれ』


「梓はこれから飯なんだ。そして風呂入って、遊んで寝る。分かったか?」


これからの予定をペラペラと話すと、後は適当に返事をするお爺ちゃん。

彼は必死に私と代われと言うけれど、このままだと変わってくれそうにはないな。


私は何とかお願いをしてみた。おやすみとだけでいい。聞きたい。


「…梓におやすみって言え」


私と代わって、彼の声を待つ。


『梓?梓、おやすみ。また電話してくれよ』


うん、お仕事終わった時間に掛けるよ。



『じゃあ、またな』



電話を切ると、お爺ちゃんが私の手を引っ張ってリビングへと連れて行く。

美味しそうな匂いがしてきて、彼もここにいたら…なんて考えながらお婆ちゃんのお手伝いをしに行った。


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