淡い色に染まるとき。
翌朝、耳元で荒い息がして起きてみるとルーチェがじっと私の顔を見ていた。

お爺ちゃん達はもう起きているんだ。ルーチェが起こしてくれなかったらまだ寝ていたかもしれない。


起き上がって着替えて部屋から出ると、誰もいないような静かさで少しだけ怖かった。

2人共、どこか行ったのだろうか。ルーチェとリビングに行くも誰もいなかった。


とりあえず、椅子に座って待っているとドタドタという走る音が聞こえた。


「親父、お袋!」


彼の声?いや、でも彼はお仕事中なはず。いきなりお休みが取れるわけでもない。

動けずに扉を見ていると、勢いよく扉が開いた。


「兄貴のことっ……あれ?」


今度は彼を幼くさせたような人が困惑顔で私を見ていた。

お互い、顔を見たまま固まっていた。当たり前だが、知らない子供がいれば誰だってそうだろう。私もこの人を知らないからどういう風に動けばいいのか分からない。


「え、えっと、君は…?」


オドオドしながら話しかけられた。私は急いでメモ帳を用意して殴り書きをした。


『梓です。恭お兄ちゃんに引き取られた』


「…君が、兄貴の娘か」


兄貴、と呼んでいるのだからこの人は彼の弟なのだろう。

メモ帳をテーブルに置いて近付くと、頭に手を置かれた。



「初めまして。恭の弟、圭だ」


この家族はとてもよく似ている。彼を少し老けさせたのがお爺ちゃん、幼くさせたのを圭さん。目や性格はお婆ちゃん似。

ただ、彼と圭さんは容姿だけではなく、声が似ている。電話だったら絶対に分からない。


「梓ちゃん、驚かせてごめんな」


大丈夫と伝えると優しく頭を撫でられた。

お互い、まだ何も知らない状態だった為、軽く自己紹介をした。


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