淡い色に染まるとき。
圭さんは20歳の大学生。教師を目指しているらしい。

私の両親とは、小学生の頃によく遊んでいたそうだ。


「愛華ちゃん、優しくて美人でライバルたくさんいてさ。でも、博也君や兄貴がいつも一緒だったから諦める奴も多くて」


笑いながら彼と両親の話をしてくれた。きっと圭さんもお母さんのことが好きだったんだろう、嬉しそうに話してくれるんだもの。

圭さんは、私が朝ごはんがまだだと知るとすぐにごはんを作ってくれた。


真ん丸なおにぎりと甘い卵焼き、ワカメのお味噌汁。


美味しくてゆっくり食べているとお爺ちゃん達が帰ってきた。

服が泥だらけで野菜を抱えていたから、恐らく畑で収穫してきたのだろう。



「おはよう、梓。すまんな、ちょっと野菜採ってこようとしたら…お、圭?帰ってきてたのか」


「あぁ。まぁ、聞きたいことがあってさ」


「あらあら。梓ちゃん、これ圭に作ってもらったの?もうー、私が作りたかったのに」


お婆ちゃんが圭さんに文句を言いながら、キッチンへ野菜を置きに行く。

戻ってくると、私の頭を撫でて1人にしてごめんねと謝ってきた。


私も起きるのが遅くてごめんね。明日からはもっと早く起きてお手伝いするから。


食べ終わった食器を片づけに行く。お皿を洗って皆の元へ戻ると圭さんがお爺ちゃん達と何か話していた。


大事な話をしているようだ、静かにキッチンへ戻って話が終わるのを待っていた。



「で、どういうことなんだよ」


「そんな話、恭からは聞いてないぞ」


「…何なんだ、本当に」


「梓に話してないだろうな」


「話せるわけないだろ。でも、由梨さんが言ってたんだ。兄貴にも確認してみるけどさ」



由梨さん?彼に確認する?

一体、どういうことなんだろう。由梨さんがまた何か?


ドクンと心臓が痛む。私に話してくれない理由は一体何なの?

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