淡い色に染まるとき。
彼がもう帰る準備をしながら話しているところへ駆け寄った。

皆が不思議そうな顔をして私を見る。


『一緒に帰る』


「え?あと5日くらい…」


『一緒にいたいの』


戸惑う彼の後ろにいるお爺ちゃん達に頭を下げた。


『お世話になりました。また来てもいい?』


「…あぁ、いつでもおいで。今度はこっちから行くかもしれんが」


「梓ちゃん、またおいでね」


「俺もそっちに遊びに行くわ」


お爺ちゃん達は笑顔で私の頭を撫でたり、抱きしめてくれた。

そして、彼の手を掴んで玄関へと向かった。


「恭、また梓と一緒に来い」


お爺ちゃんが彼の肩を掴んで笑った。彼も笑いながら爺バカだなぁと呟いて叩かれた。

そんな2人を見ていると、お婆ちゃんが漬物や野菜を持たせてくれた。


「お手紙出すからね。お野菜も送るから」


『ありがとう。私もお手紙出すよ』


お婆ちゃんと抱き合っていると、圭さんが近づいてきた。


「兄貴のこと、頼んだ」


『分かった!』



大きく頷いて圭さんに抱きつくと、にっこり笑って抱きしめてくれた。


タクシーに乗って、振り返ると皆が大きく手を振ってまたおいでと言ってくれた。


また来るからね、今度は2人で来るから。


短い旅をして、私と彼はまた距離が縮まった。


夏の途中、私達は本当の親子になれた気がした。



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