淡い色に染まるとき。

♂夏の終わり♀

夏休みもあと数日で終わる。宿題もすべて終わっているし、特にやることもない。

洗濯物を干していると、由梨さんがやってきた。


今回、勝手に来たわけではない。私が彼に頼んで呼んでもらった。

彼には少しだけ2人きりにしてほしいとお願いをした。


「恭はいないの?」


『お買い物に行ってもらってるんです』


「そう。で?話って何?」


『私のことが嫌いでも、恭お兄ちゃんを傷つけないでください』


「何のお話かしら?」


煙草を吸いながら私を睨んできた。そんな目をしても、もう怖くない。


『嘘を吐いても、私と恭お兄ちゃんは離れません』


「何であなたといるか分かってるの?」


『分かっています。だから私は確かめたんです。あなたが吐いた嘘のおかげで』


煙草を持つ手が震えている。ごめんなさい、でも譲れない。

彼が好きだという気持ちは誰にも負けない、負けたくない。譲りたくない。

だからどんなことをされても、ここを退くつもりはない。


『もうすぐ恭お兄ちゃんが来ます。言いたいこと、言ってください』


「…本当に愛華そっくり」


俯いて震える由梨さんに近づいて、ハンカチを渡した。

驚きながらもそのハンカチで涙を拭った。


「愛華が羨ましかったの。博也と恭に愛されてて。私、いつもこんな性格だから嫌われててさ、本当に…羨ましかった」


背中を擦ると、泣きながら話してくれた。そして意地悪してごめんねと謝ってもくれた。


「恭のこと、好きじゃなかった。ただ、愛華の大切な人だったから…」


奪ってやりたかった、と言った。そうか、じゃあ彼の言っていたことは本当だったんだ。

彼は由梨さんは自分の事嫌いだと言っていた、そうだったんだ。


彼が来るまで、由梨さんは泣きながらすべてを話してくれた。


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