淡い色に染まるとき。
素直についていくと、何故か途中で花束を買って、果物を買って、また歩く。

一体、どこへ行くんだろう。どんどん真剣な顔をする彰さん。


「おい、どこ行くんだ」


「俺さ、日本に戻ってきてから沖縄しか行ってなかった。行きたいとこはまだあってさ。真っ先に行くべきだったんだがな」


ピタリと立ち止まって、指を差す先とは。


「墓地…?ここって」


「あいつらにまだ謝ってなかった。それに話したいこともたくさんあるし」


両親の眠るお墓。

お盆に彼と2人で来たんだ。お母さんの好きだったお花とお父さんの好きだったお煎餅を置いていった。彼は煙草に火を点けて、お父さんに話しかけていた。お母さんには果物を置いて話しかけていた。


私もたくさん両親に話をした。夢の中で会って話しているから特別伝えることはあまりなかったけど、とにかく話しかけた。どうでもいいことでも、何でも。


両親のお墓の前に着くと、彰さんは花束と果物を置いて、手を合わせた。

きっと話しかけているんだろうな、私達はそっと後ろで見ていた。


お父さん、お母さん。彰さんってとってもいい人だね。面白くて優しいんだよ。

彼とどうでもいいことで喧嘩するけど、お父さんもきっと一緒になってやってたでしょう?


お母さんも私と同じように笑っていたんだよね。時々、怒っていたかもしれないけど。


空を見上げて、2人を思い出す。


青い空にふたつだけ寄り添うような雲が現れる。


そして、ひとつになって大きな雲になった。


『あれ、お父さんとお母さん。あっちの雲は私と恭お兄ちゃんと彰さんだね』



遠くに小さな雲と中くらいの雲と大きな雲。

小さい雲と大きな雲はくっついていた。中くらいの雲はついてきているような。



「本当に俺らだなぁ」



笑いながら私と手を繋いだ。これだったら、そっくりだね。


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