淡い色に染まるとき。
「それじゃ、失礼します」


「また来いよ。あと、今度飲みに行くか」


「先生のおごりで!」


「お前らのおごりに決まってんだろ。梓ちゃんも一緒に飯食いに行こうな」


先生達にさよならをして、学校を出ると2人は笑顔だった。

懐かしむように学校を見て、子供に戻ったような笑顔。

帰り道もずっと過去の話をしていた。あの先生は、あの子は、あの場所は…なんて話していた。時々、私にも分かるように説明してくれたりもした。


何だか中学生と歩いているような不思議な時間。


「あの頃は、愛華モテモテだったよなぁ」


「博也が壁になってたけどな」


「優しくて美人で頭良くて…梓ちゃんも可愛いからモテるんだろうなぁ。中学生になったら」


「梓、新しい友達が出来たら、絶対に言えよ」


「おいおい…」



楽しい時間というものは、本当に短く感じる。

家に着けば、彰さんが泊まるというので布団を用意したり、夕ごはんを作ったり、お風呂の準備をしたりとやらなければいけないことがあるからだ。


でも、今夜はたくさんお話が出来そうだ。



3人で同じ部屋に眠ることになったからだ。

修学旅行みたいだ、と彰さんがはしゃぐと彼が思い切り枕をぶつけた。


無言で投げ合う2人を見て、私は溜息を吐きながらメモ帳に急いで書いた。


『近所迷惑になっちゃうよ』


その一言でピタリと止まる。こんなことより、お話ししよう?


彼の高校生の時の話。彰さんの告白失敗談。色んな話を聞けて楽しくてなかなか眠れない。


それでも、2人はウトウトしてしまっている。これ以上は可哀想だと思い、眠ることにした。


2人の顔をじっくりと見てみる。お母さんも大変だったろうな、大きな子供がいたら。



夏の終わり、それぞれの想いが終わり、始まった。


虫の声を聞きながら私もようやく眠ることが出来た。



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