淡い色に染まるとき。
翌朝、彼のネクタイを結んでいると彼がニヤニヤしていた。


「奥さんみたいだな、梓」


『旦那様、今日は遅くなりますか?』


ふざけて言ってみると、彼は笑顔で私の頭を撫でた。



「早めに帰ってきます」


何だか、変な感じ。でも、彼の奥さんかぁ、それもいいかもね。

もし、彼が結婚出来なかったら私が奥さんになってあげるよ。


そのことを伝えると、彼は顔を真っ赤にした。


「…梓…」


『恭お兄ちゃんなら結婚できるよ。きっと優しくていい人に出会えるよ』


「…まぁ、そうだよな」


急に落ち込んで、洗面所へ向かう。

どうしたんだろう、何かいけないことでも言ってしまっただろうか。


ついていくと、髭を剃っていた。でも、あまり生えていないから特に変わっていない。

手を伸ばして触ってみると、彼が私の頬に顔を押し付けてきた。


元気になってくれてよかった。昨日はあんなに疲れた顔をしていたのに、今日はとてもいい笑顔で元気だ。


どうか、彼女達の遊びがなくなっていて。

彼や他の人達を傷つけるようなことをしないで。


一緒に学校を行くまで、私はずっと願っていた。





< 77 / 144 >

この作品をシェア

pagetop