淡い色に染まるとき。
どうしよう、きっとあの手紙は彼の事が好きな女の子が書いたものだ。

彰さんに伝えようとしたが、彰さんはこれからまた仕事があるらしい。ゆっくりしている時間はないようだ。仕方ない、とりあえず後で彼に伝えよう。


彰さんに家まで送ってもらった。彰さんの車が見えなくなるまで手を振ると、後ろから髪の毛をぐしゃぐしゃにされた。


驚いて振り返ると、圭さんがニヤッとしていた。


「久しぶり。夏休み以来だな」


『うん。お久しぶりです』


「兄貴から色々聞いたから。じゃ、早速部屋行こう」


手を繋いで部屋に入ると、圭さんはキョロキョロして一言。


「シンプルだな」


『そう?』


「兄貴のことだから、梓の為にぬいぐるみいっぱいにしてるか、部屋中ピンク一色にしてるのかと思ってた」



そんなことしないよ。私もそんなにピンク好きってわけじゃないし。

ぬいぐるみは私の部屋にあるよ。彼の部屋には1つ置いてあるよ。

案内をしていると、彼の部屋へ勝手に入って、はしゃいでいた。


「何か兄貴を土下座させるくらいのネタがねぇかなー」


土下座?ネタ?

勝手に色んなところを開けてしまう圭さんを急いで止めた。

そんなことしたら怒られちゃうよ。大事なものがあるかもしれないのに。



「…あ。あったー」


一枚の写真を見てみると、赤ちゃんを抱っこして赤ちゃんの頬にキスをしている。


…この赤ちゃんと写真の裏に書いてる日付…。


『私?』


「だろうな。うわー、これは博也さんに怒られただろうなぁ」



ニヤニヤしながら、その写真を私に見せる。


< 85 / 144 >

この作品をシェア

pagetop