淡い色に染まるとき。
ずっと持っていてくれていたんだ。圭さんが他にも色んな写真を取り出した。

私がどんどん成長していく写真が出てくる。抱っこしてたり、オモチャで遊んでくれたり、ごはんを食べさせてくれたり。


嬉しくて圭さんを止めることも忘れてしまった。


彼が私の成長をずっと見ていてくれた。赤ちゃんの頃からずっとお世話してくれていた。


「兄貴は、梓を引き取る時、周りから変わり者扱いされていたんだ。独身でまだ若いのが何やってんだって。でもな、兄貴は絶対に俺が育てる、迷惑はかけない、もう俺はいないものだと思ってくれって言ってた」


そんなことがあったんだ。私、何も知らなかった。

写真をもう一度、じっくりと見て元に戻した。


いつか2人で思い出話をしながら見たい。あの頃は…なんて言って、彼と一緒にお酒を飲みながら、寄り添って話をしたい。


その時まで、この写真とお別れだ。


「さてと、飯作るか。梓、俺のバッグにお土産入れといたから、開けて食っていいぞ」


『ありがとう』


圭さんがごはんを作りに行って、私はバッグに近づいてお菓子を出した。

あ、八つ橋とか京都のお土産。あれ?これは手作りの?

開けてみると、手作りロールケーキが入っていた。誰が作ったのかな、圭さん…作れるのかなぁ?



「あぁ、それは…お婆ちゃんが作ったんだよ」



そっかぁ。私はロールケーキをテーブルに乗せると、圭さんが包丁を持ってきて切り分けてくれた。その上にイチゴを乗せてくれた。


美味しそう、彼と一緒に食べたかったな。


心の中で彼に謝って、一口食べてみる。


『おいしい!』


「良かったな。あ、クリームついてんぞ」


唇についたクリームを取ってくれた。お礼を言いながらまた一口食べてみる。


ゆっくり噛んで味わう。夏休みの旅行を思い出す。


また会いに行きたいなぁ、今度は私がごはん作ってあげたりしたい。


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