淡い色に染まるとき。
放課後、私は先生にお礼を言って学校を出た。

約束通り、圭さんと一緒にお見舞いへ。行く途中に花束を買ったが、圭さんが俺が出すと言って半分だけ出してもらった。


彼の病室に入ると、退屈そうに空をぼんやりと見ている彼がいた。


「暇してんなぁ」


「お、梓!いらっしゃいっ」


「俺を無視すんな!」


彼が急に笑顔になって私を呼ぶ。勢いよく彼の胸の中に飛び込むと強く抱きしめてくれた。

久しぶりの再会でもしたかのようだ。彼もそんな感じで頭も強く撫でてくる。


圭さんは無視されて怒ったのか、無言で彼に近づき携帯を見せた。


「そ、それは…」


「食べてる写真、遊んでる写真、掃除してる写真、食器洗ってる写真…まだまだあるけど?」


勝手に私の写真を撮ったんだ。何でそんなことを…というか、そんな写真撮らないでほしい。


彼は何故か携帯を奪ってじっくりと見ている。怒らないの?


「これ、後で俺に送れ」


「送れ?」


「…送ってください」


もう、そんなもの送らないで。盗撮っていうんだよ、そういうの。


頬を膨らませて怒ってます、という表情をすると2人はわざとらしく咳をして誤魔化す。

後でその写真は消してもらおう、そんなものが色んな所に出回ったら…。


「あ、兄貴。これ、梓と俺から」


「おお!ありがとう!いやー、嬉しいっ」


仕方ない。この話はこれで終わりにしてあげよう。これ以上、2人に何を言っても送られてしまうのだから。



『体、大丈夫?』


「大丈夫だよ。もう今からでも走り出せるぞ」


良かった。そうだ、花瓶にお水入れてくるね。お花入れたいから、ちょっと行ってくるよ。


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