淡い色に染まるとき。
花瓶に水を入れて彼の病室へ戻る時、キョロキョロとしている女の子がいた。

私と同じくらいの年かな?何か探しているみたい。

メモ帳に急いで書いて女の子に見せる。


『どうしたの?』


「この辺にオモチャの指輪、なかった?」


『見てないけど…一緒に探そう』


「いいの?ありがとう」


花瓶を置いて、私も一緒に探す。しゃがんで落ちていないか探してみる。


「青いお花のついた指輪なの。あれ、妹がくれたものなの」


そうか、じゃあ絶対に見つけないと。物をどかして探して10分。


『これかな?』


近くに置いてあったバケツの中に入っていた指輪。

女の子に渡すと涙目になりながら、ありがとうと何度も言った。


『よかったね』


「あの、名前聞いてもいい?私は雪」


『梓。よろしくね』


「ありがとう、梓ちゃん。じゃあ、私これから診察なの。またね」


『またね!』


雪ちゃんはぎゅっと指輪を握って去って行った。

新しいお友達が出来そうだ。これは後で彼に教え………あ、花瓶!


急いで花瓶を持って彼の病室へ向かう。


「あ、梓。迷子になったかと思って探しに行こうと…」


圭さんが1人で椅子に座っていた。あれ?彼はどこ?もしかして、彼も診察かな。


「梓を探しに行ったんだよ。まぁ、もうすぐ帰ってくるんじゃないか?ほら、チョコでも食べて待ってよう」


どうでもいいようにポケットからチョコを取り出して、3つくらいくれた。

…どうしよう、怒られちゃうかな。


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