淡い色に染まるとき。
「俺は梓にお酌して飲むのが好きなんだ。遊ぶのだって梓と一緒がいい」


でも、たまには息抜きくらいしたっていいのに。


『キャバクラとか行かないの?』


「キャ…キャバクラ?おい、圭!何を教えてんだ!」


「いや、待て。俺はそんな言葉一回も使ってねぇ!」


『花ちゃん達のお父さんがよく行ってるんだって』


たまには1人で遊んで、疲れを癒したいって言ってたよ?

でも、キャバクラってどんなとこなんだろう。花ちゃんに聞いても女性とお話するだけのつまらないものよって溜息吐いてたけど。


「俺は行かない。梓と話してるほうがいい」


手で顔を覆いながら消え入りそうな声で呟く。

落ち込んでるのかな、ごめんね。変なこと言っちゃったかな。

あ、じゃあ!


『スナック』


「梓、頼む。それ以上言わないでくれ…」


「どんどん大人になってるな…」


結局、彼は私といるほうがいいということになった。

提案したものはすべて忘れろと言われた。悪い言葉じゃないはずなんだけどな。


面会終了まで私達は楽しくお喋りをした。

彼の体調も良くなってきているのは分かったし、退院も早まるかもしれない。


「そろそろ帰らないとな」


『うん。じゃ、また明日も来るからね』


「あぁ、待ってる」


彼に手を振り、私達は家へと帰る。

圭さんも、彼が元気になっているのを見て安心したようだ。時々、微笑んでいるのが分かったから。


早く彼が退院しますように。一緒にまた手を繋いで眠りたいの。


彼の笑顔を思い出しながら何度も何度も願った。



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