淡い色に染まるとき。
あれから私達は、彼の退院の日まで毎日お見舞いに行った。雪ちゃんにも会いに行くととても喜んでくれた。花束をあげると、お礼にと砂時計を貰った。


「梓ちゃんが来てくれるとね、だんだん喘息が良くなってる気がするの。だからね、もうすぐ学校行けるかも」


嬉しそうに話してくれる雪ちゃん。私は何もしてないよ。雪ちゃんが喘息に負けないように頑張っているからだよ。


『そういえば、学校ってどこに通っているの?』


何となく聞いてみると、雪ちゃんが通っている学校は私と同じ学校。

雪ちゃんにそう言うと、じゃあ同じクラスになってるかもしれないねと笑った。


そうだといいな。後で先生にも聞いてみよう。


「梓ちゃん、今日でお父さん退院するんでしょう?」


『うん。でも、雪ちゃんに会いに来るよ』


「ううん。いいの。あのね、次会う時は…学校がいいな」


『学校?』


「私、もうすぐ退院出来るかもしれないの。だからね、元気になった姿で梓ちゃんに会いに行きたいの。ね?」


『分かった。約束だよ』


指切りをして抱き合った。絶対、会いに来てね。


彼と帰る時間になり、私は雪ちゃんに大きく手を振った。

雪ちゃんは笑顔で手を振った。次は学校で。



病院を出ると、彼は嬉しそうだった。久しぶりの家に帰るのが嬉しいのだろう。


「梓、寂しかったー」


『嘘!雪ちゃんが言ってたよ。看護師さんにモテモテだったって』


「…雪ちゃん、お喋りだなぁ。いやいや、モテモテとかそんなの…」


『分かってるよ。私も寂しかったもの』



圭さんがいた時、とっても楽しかったけど、夜になるととても寂しくて悪夢ばかり見てしまっていた。

だから、最近もよく眠れていなかった。


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