淡い色に染まるとき。

♂父娘♀

「来ちゃった」


彼と寒くなってきたねと窓から外を眺めていると、女の子がこちらを真剣な顔で見ていた。

それに気付いた彼が呆れながら女の子に話しかけると、部屋の前までやってきた。


「こういうことはやめろって言ったんだけど?」


「だって…学校でも2人きりで話してくれないじゃないですか」


「相談と勉強のことならいくらでも聞く」


早く帰そうとするが、女の子は帰りたくないと彼の腕を掴む。それでもダメだと気付くとその場に座り込む。

何だか子供みたいだなぁ。失礼だとは思うけど。


「いい加減にしてくれ。この前の俺の言葉は伝わらなかったのか」


「あれは遊びの人に向けて、でしょ?私は本気ですから」


「…悪いが、無理だ」


「教師と生徒だから?」


「それもそうだが、まず俺はお前を恋愛対象として見ていない」


「…だから…これから」


泣きそうになりながら、彼に想いをぶつける。

それでも彼は言葉を選びながら女の子に気持ちを伝える。


辛そうにしている女の子を立たせて、私に家まで送ってくると言って出て行った。



あの女の子、本当に彼が大好きなんだろうな。留守電もメモも、きっとあの女の子。



彼も気付いているのかな。



冷めたココアを飲みながら、彼の帰りを待つ。


もし、彼が今誰かと結婚したら、私はどうなるんだろう。


きっと邪魔しちゃうね。どこかの施設に入れてもらうしかないかな。


悪いことばかり考えてしまう。ダメだ、彼が心配しちゃう。


頬を二度強く叩いて、マグカップを洗いに行った。


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