淡い色に染まるとき。
【恭】目線


「何だか疲れてるようだな」


体育教師、古山先生が俺の肩を掴んで嬉しそうに揺さぶる。


「そういや、さっき泣きながら登校してきた奴がいたな」


ドキッとして思わず古山先生の顔を見る。それをまた嬉しそうにする。

きっと分かっているはずだ、なのに俺の口から聞きたいんだ。


「いや、まぁ。何かあったんじゃ…」


「ふーん」


「…家に来たんですよ。それで、ちょっと強く言ってしまったんです」


「それは仕方ない。言ってよかったんだよ」



でも、泣かせてばかりだ。どうにかしたいが、気持ちに答えることは出来ない。

梓にもストレスを与えているかもしれない。梓は大人びているが、そのせいで色々と溜め込んでいるかもしれない。


夜もなかなか眠れないようで、窓から外を見ていたり、月を見ていたりしている。

抱きしめると嬉しそうに笑う。それでも、心にある何かを取り除いてやることは出来ない。どんなに強く抱きしめても、頭を撫でても、一緒にいてあげても。


それでも、最近は少しずつだが眠れるようになってきている。


だが、今の状況を続けていると、また同じことの繰り返し。



「ちゃんと話し合ったほうがいいんじゃないか?」


「…そうですよね。放課後、話し合ってみます」


「そんじゃ、その辛気臭い顔を洗って来い」


「はい、ありがとうございます」



こんな顔してたら生徒達も心配する、顔を洗っていつも通りにしなければ。


頬を数回叩いて、荷物を持って教室へと向かった。



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