アンジェリヤ
毎日のように、彼の写真を見る。彼のことが、好きだった。色素の薄い肌に、天使の輪のある、きれいなショートの赤い茶髪。いつも笑顔を絶やさない、やさしい人だった。
そんなときに、“彼”は再び現れた。別れた2年前とまったく変わらないその姿は、すぐにわかった。
綾を見て、昔のように微笑んだ。
何気なく、近所をぶらぶらしていたときに、“彼”はこちらをふと見て立ち止まった。
「久しぶり」
彼の言葉が、胸にしみた。ああ、やっと久しぶりに出会えた。彼は相変わらず、優しげな瞳をしていた。4月にふさわしく、チューリップの花が、ちょうどの家の庭で咲き誇っていた。たくさんの国の国花になるだけあって、色鮮やかでとても綺麗だった。ピンクレディーにモナリザ。種類はいくつもあるが、どれもそれも個性があり美しい。
それを見て、初めてあったころを思い出す。
「ひ、ひさしぶりだね、順」
彼の名前を呼んだのは、いつ振りだろうか。思わず目が潤んでくる。また、その名前を本人に向かって呼ぶことができるとは、思っていなかった。
「ごめんね、いきなりココへ来なくなって。実は、急に引っ越すことになって」
それならば、連絡があるはずだと思いつつ、綾は軽くうなずいて彼に飛びついた。
「会いたかった」
「僕も、会いたかったよ」
道路のど真ん中にいたので、少し綾は順のほうへと体を寄せた。軽く手が触れて、心が揺れる。
いつまでも、いつまでも二人で話していたいと思った。だから、綾は家に来ないかと提案した。
「それは、できないなぁ」
彼は苦笑いを浮かべて答えた。なぜ、と問い返す。
「僕、ここに用事があって、帰ってきただけだから」
「用事?」
「うん、ここの近くの電気屋に、カメラを買いに」
「私も、いきたい」
少しでもそばにいたかった。綾から伸ばされた手を、受け取ると、彼はぎゅっとそれを力を込めて握り締めた。昔も、こういう風に不安になるたびに手を握り締めてくれた。
それは、恋愛とは違う感情だった。まるで、兄弟のようないとこのような、親密な関係。一番近いたとえは、親友だろうか。
「ごめん、ね」