アンジェリヤ
「知らないほうがいいことだって、あるんだよ。僕は、君が元気でいてくれて、それよかった」
「あなたがいないと、元気じゃなくなるかも、知れないよ?」
「依存は、いけないよ」
 わかっていた。そんなことぐらい。視線を道路に移し、うつむく。彼は困ったような表情でこちらを見ている。
 母方にいったものの、学校を素直に楽しんでいない自分のことを、見透けられた気がした。順が行くって言うから、自分も行くと言い出した。だから、しかたないといえばそうなる。
 友達は作ったものの、なかなか深い関係にはなれずに、うわべだけの浅い付き合いばかりしていた。それでも、居場所をなくすよりはぜんぜんいいと思うのだけれど、それでも親友という存在がいないのは、結構つらいものだった。だからなおに、彼に会いたいと思ったのかもしれない。
「お願い、また来てよ」
 すがるように、彼の袖を引っ張る。彼は困ったように視線を空に泳がせてから、綾の顔をみた。
「その、時期が来たらね」
 腕をそっと解くと、彼は悲しげな笑みを見せた。まるで、その時期が来ることを拒むように。


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