誕生日は残業


日野さんは執務室内を見渡し、私しか残っていないことに気づいたのか。


「…他のやつらはもう帰ったのか?」

さっきの微笑みから一変して、真面目な仕事の顔に。


「えっと…帰りましたね。
あ、でもあたしも全然大丈夫なので!
日野さ…係長も出張でお疲れだと思いますので気にせず帰っていただいて…。」

構いませんよ、と言い切る前に日野さんはポンとあたしの頭に手を置く。


「お前はいつも無理しすぎなんだよ、もっと周りを頼れ。
…まあ、上手く頼らせてやることが出来ない俺にも責任はあるんだけどな。」


思いがけない優しい言葉に、涙腺が緩むのを堪えて「はい。」とだけ答える。



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