どんなに涙があふれても、この恋を忘れられなくて


星野くんの腕をぎゅっと掴んで行こうなんて言う彼女。


嫌だ、嫌だ。



鼻がジーンとして、目が潤んでしまいそうになるのをこらえ

私は反対方向に走りだした。



「ちょ……!心ちゃん!!」


後から佐野くんの声がする。

こんな事したら絶対に不自然だって分かってるのに


泣きだしてしまいそうな気持ちを抑えられない。


悲しい、苦しい。息が出来ない。


何も考えずにただ夢中で走れば芝生のある公園で私は石に転んだ。


「痛い……っ」


痛いのは擦りむけた足よりも心の方。

苦しいのは走ったからじゃなくて、星野くんの彼女を見たから。



「えっく……」


人を気にもせず、転んだまま泣いていると



「お姫様、それじゃあお洋服が汚れてしまいます」






< 131 / 422 >

この作品をシェア

pagetop