どんなに涙があふれても、この恋を忘れられなくて
星野くんの腕をぎゅっと掴んで行こうなんて言う彼女。
嫌だ、嫌だ。
鼻がジーンとして、目が潤んでしまいそうになるのをこらえ
私は反対方向に走りだした。
「ちょ……!心ちゃん!!」
後から佐野くんの声がする。
こんな事したら絶対に不自然だって分かってるのに
泣きだしてしまいそうな気持ちを抑えられない。
悲しい、苦しい。息が出来ない。
何も考えずにただ夢中で走れば芝生のある公園で私は石に転んだ。
「痛い……っ」
痛いのは擦りむけた足よりも心の方。
苦しいのは走ったからじゃなくて、星野くんの彼女を見たから。
「えっく……」
人を気にもせず、転んだまま泣いていると
「お姫様、それじゃあお洋服が汚れてしまいます」