どんなに涙があふれても、この恋を忘れられなくて


低めの彼の声はよく私の耳に通る。


伝わったんだって、安心して

顔を上げればそこには困り顔の彼がいた。


「勘違いだって言って勝手に決め付けて悪かった」


真剣に謝る彼をみると

彼はぱっと視線を逸らして言った。



「好きとかはよく分かんねぇ……

けど、


人に好かれるのは嫌いなのに

お前に好かれるのは嬉しいと思った」


「え、」


彼の耳がほのかに赤い。

なんだか信じられなくてパチパチと瞬きを繰り返せば

星野くんはまたつぶやく。


「俺も、机から前のドアをよくみる」


前のドア……。






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