どんなに涙があふれても、この恋を忘れられなくて



「どうかした……?翼くん」

「いや、何でもない」


だから俺はウソをつく。

どっちかを傷付けないためにウソをついて安心させる。


それは、罪悪感と引き換えに。


「帰るか」


そう言って、彩花の所に向かうんだ。


「ねえ、翼くん、今日は行かないよね?」


「うん」


「まっすぐ家に帰るんだよね?」


「うん」


この時の俺は分かっていなかった。


傷つけないためのウソが、もっと人を傷つけることを




「じゃあまた明日ね!」


「ああ」


心の笑顔を見て、安心して俺だけが罪悪感を背負っていけば

それでいいと思っていた。

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