どんなに涙があふれても、この恋を忘れられなくて


「ごめん」

彼はもう一度、そう言った。


「私……聞いたの

星野くんの両親のこと、彩花ちゃんから」

彼の表情が少し変わる。

それはたまにする、寂しそうな顔だった。


「教えてほしかった……

私に、分かる痛みなんかじゃないけど

それでも教えてほしかった。」


私のお弁当を食べた時、

彼は涙を流した。


それはやっぱり


『なんかすっげぇもん見た時とかに涙出んの』


こんな理由では無くて、

もっと、もっと深い悲しみからくるもので


気付いてあげられれば良かった。


だけど


彼も何も言ってはくれなかった。


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