どんなに涙があふれても、この恋を忘れられなくて


「翼くんまだ来なくてさ

忘れてるのかな?もしかして今寝てるとか……」


ぎゅうーー


涙をごまかす様に

無駄にたくさんしゃべる私を、佐野くんは抱きしめた。


「佐野く……」

「寒いよ、心ちゃん体が冷え切ってる」


冷え切った体は佐野君という温かさに包まれてほっ、とする。


「うん、やっぱりこの時期は冷えるなーって……」

「帰ろう、もう」


いつも優しい佐野くんは私の話しをしっかり聞いてくれるのに

今日は言葉を遮ってばかりだ。


ぎゅっと握りしめる力も強かった。


「帰らないよ

約束したから……仲直りした日

もう約束は破らないでって強く言っちゃったから

きっと来てくれる」


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