どんなに涙があふれても、この恋を忘れられなくて
「おい、彩花……?」
俺がそう問いかければ、彼女は
「た、すけて……」
苦しそうな声でそう言って電話を切った。
行かない。俺は心との予定がある。
本当に苦しいなら俺に電話をかけてきたりしない
病院にいるんだ、もしそうだったとしてもすぐ誰か来てくれる。
そうやって自分に言い聞かせて落ち着かせるが
助けて、という彩花の言葉が耳を離れなかった。
いつも誰かがいなくなる時は
俺がその場にいない時だった。
「くっそ……」
俺は、鞄を持って、駅とは反対側のバス停に走った。
バスから降りた後は出来るだけ急いで病室に向かった。