どんなに涙があふれても、この恋を忘れられなくて
しかし、何もかも忘れてイスに座っていると
医者が話しかけてきた。
「彼女は今、部屋で眠っているよ」
「はい……」
「それより、君顔色が悪いが大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
自分がどんな様子だったのかは全く覚えていない。
俺は医者からそのことを聞くと
ふらふらと彩花の部屋に戻った。
ぐっすりと眠っている彩花。
呼吸をしっかりしているのを見て俺は安心した。
安心とともに、思い出されたのは
心の顔だった。
時間を見る。
もう時間は10時を指していた。