どんなに涙があふれても、この恋を忘れられなくて


星野くんと会ってすぐ逃げた。

彼は逃げた理由を分かっているだろう。


「佐野くん……」


ドキドキと心臓が鳴るのは走ったからだけじゃない。


「私、戻ってきちゃったよ」


会いたくないって思ったのに、会えて喜んでいる自分が心のどこかにいる。


「私……星野くんへの恋心戻ってきちゃったよ」


忘れなきゃ。

その意思は私をあざ笑うかのように、一瞬で戻って来た。


「どうしてだろう」


あんなに、頑張ったのに。

昼間は極力せかせかと動いて、何もしないでいる時間をなくした。


特に寂しくなりやすい夜は、楽しいテレビを見て自分を元気付けた。
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