どんなに涙があふれても、この恋を忘れられなくて


ずーっとうわの空で考え事をしていた私は


授業の内容なんて全く頭に入っていなかった。


慌てて帰る準備をして、教室を出ると、

佐野くんはあらゆる人に話しかけられていた。


「じゃーな佐野!」

「バイバイ佐野くん」


「おう、またな~」


佐野くんは友達が多い。

廊下をすれ違うたびに、誰かとあいさつを交わし

笑顔を見せる。


きっと人付き合いもうまいんだと思う。


「心ちゃん、今日は俺のとっておきの場所を紹介しちゃうぞ」

元気にそう言った彼を見て、

私も笑った。


「ここで~す」


学校から歩いて15分。


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