どんなに涙があふれても、この恋を忘れられなくて
彼が私の名前を呼んだ時、
私は全速力で逃げ出した。
「待ってよ、心ちゃん!」
もう嫌だ。
自分に向いてくれないって分かっていながらも
彼の事を考えてしまう自分がもう嫌だ。
いつかは戻ってきてくれるかもしれない
と、甘い考えをしている自分が嫌だ。
もう嫌なんだよ。
星野くんのことを考えたくない……っ。
もう、恋していた気持ちなんて忘れたいよ。
ぎゅっー。
思いっきり走っていたら、私は佐野くんに
後ろから包まれた。
「はえ、って」
彼は呼吸を整えているけれど
私にはそんな余裕はない。
「も、やっ……だ」